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日々の雑感や詩など。
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 生温い風が墓地を通り抜ける。小さな影が遠き森から、遠き丘から、遠き海から集まってくる。幾十、幾百と限りなく集まってくる影の輪の中、その中央に、麗しき竜がすっくと立つ。
 人の顔と二つの竜の顔を持つ翡翠の竜は、銀の鉤爪を月の灯りに煌かせる。

 墓地に乱立する十字に組まれた石の間に影達は集まり、麗しき三頭の竜に頭を垂れる。
「三十の軍団の上に立つお方、偉大なる地獄の公爵! 」
 影達の声が不吉な風の轟きとなって人家を揺るがした。人にその声は聞き取れず、和する声は十字に組まれた石の下より響く。
「我らに命を、我らが主、我らに知恵を与えし我らが主よ! 」
 黒く濡れたような土が盛り上がり、地面の底から手が伸びる。今まさに隠されようとしている月を憎むように、手が、手が、手が。
 起き上がる者達の瞳に理性はなく、生の焔もまた然り。

 翡翠の竜が月を仰ぐ。煤のように黒い雲がその姿を遮っていく。
「死の言葉を知る方、死者の王、死霊の王! 」
「知恵を、叡智を、力を与えたまえ! 」
 麗しき竜、その瞳は滴るような毒を含み、その声は艶かしくもしわがれて響き、しかしその輝きは天使も霞むほどの……悪。

 死の饗宴が暗闇の中に始まった。
 生きている者は何人たりともその宴に参加出来ず、参加しようとすればその身は麗しき竜の支配下に下るであろう。それでも叡智を求める者は後を絶たず、麗しき竜は悪意と好意に満ちた瞳で人を堕する。

 麗しき竜よ、何故御身は我を見捨てたもう。何故御身は我を捨て置かれる。
 御身を愛することイゾルデのごとく、御身を慕うことサロメのごとく。
 我も御身の奴隷となりて、その影を、その姿を。
 たとえ、死の虜囚となろうとも。



思いつきで書いたのであまり面白みはない。
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いつか綺麗な言葉を作りたい。

空ろな人です。中にはたくさんの汚泥が詰まっています。
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