日々の雑感や詩など。
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「人は嫌いです」
少女ははっきりとした声でそういった。その瞳に躊躇いはない。
「人は、嫌いです」
もう一度、俯きながら、まるで自分に言い聞かせるかのように少女は言う。
少女はしかし、僅かに自分の言葉に首を傾げた。
「どうしたの」
「ああ、いえ……」
躊躇いはない瞳に、思案が映り込む。しばし考えた後、少女はまた言葉を紡いだ。
「人……ではなく、生きているものが嫌いです」
「それは、僕も含まれるのかい?」
「あ、すみません」
少女は否定しなかった。
僕は溜息を吐く。
「で、どうして生き物が嫌いなんだい?」
「……私の性的恍惚は、破壊によってしか齎されない」
「難儀だねえ」
「はい。ただ救いともいえるのは殺人衝動ではなく、破壊衝動であるということで」
「どう違うの?」
「私にも、良くは。でも、私が最も恍惚となる瞬間は機械を叩き壊すことです」
「機械を?」
「はい」
そして少女は妖艶に微笑んだ。
「叩き壊して中の回路を引き出して、切り刻んで、そしてまた跡形もないほど叩き壊す。これが一番好きです」
「……誰かを好きになったことは、ないんだね?」
「はい。生き物は湿っぽいですから。もっと無機的に壊れて欲しいんです」
これが少女の本音なのだろう。ただたんに、人間は壊したときに湿っぽいものとなる。だが機械はただ乾いた残骸にしかならない。
そう思うと、僕は背筋が寒くなった。
「ああでも」
「なんだい」
「夜中に通り魔的に人を殺せば、どれだけ楽しいのだろうと考えたことはあります」
そのときの少女の笑顔は、何よりも無邪気だった。
純粋に、楽しいと思っているだけなのだろう。
数日後その少女がテレビに映っていた。
僕はそれを見ながらコーヒーを啜った。
少女は何よりも幸せそうで、満ち足りた笑顔をこっちに向けていた。
それが僕へのメッセージだと、なぜか解った。
「良かったよ、幸せそうで」
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ゆ。
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非公開
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観測者
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観察
自己紹介:
いつか綺麗な言葉を作りたい。
空ろな人です。中にはたくさんの汚泥が詰まっています。
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